犬の生食は本当に安全?「胃酸が強いから大丈夫」説を考える
ここでは、ペット食育上級指導士としての活動経験、また、自分の計8頭、計35年間の犬猫との暮らしでの探求、また、10年以上になるペットの食事や体質改善を行う獣医師の動物診療現場で培った経験を元にお話ししています。
昔、7年間ほど愛犬を生食で育てていたこともあります。つまり、実践経験も持った上でのお話しです。
私は、生食を絶対否定する立場にはありませんが、個人の体験、動物診療現場での体験、学術的な論文情報、クライアントの体験からメリットとデメリットを知った上で慎重に選択すべき事と捉えています。
メリットは世の中にたくさん情報として存在しているので、デメリット、ならびにどう捉えるか?という考え方を書いていきますね。
大切な家族の食事を探求する方、悩んでいる方、情報の多さに困っている方のお役に立てましたら幸いです。
目次
1.犬は胃酸が強いから生肉でも大丈夫?
「犬は胃酸が強いから、生肉の菌は死ぬので安全だ」と言われることがあります。
確かに犬の胃は強い酸性環境を作ることが知られています。
ただし、胃酸は万能な盾ではありません。
感染は、菌の種類、菌の量、滞留時間、免疫状態など複数の要因が重なって成立します。
胃酸が強いことは一つの要素ではありますが、それだけで安全性を保証できるとまでは言えないのではないでしょうか?
また、この理論でいくと、生食のメリットと言われている酵素や乳酸菌などの腸に到達する前に失活していることになるのではないでしょうか?
2. 食後の胃内pHはどう動くのか
たしかに、犬の胃内pHは空腹時には強い酸性を示し、それが胃酸が強いと言われる一つの理由かと思います。
しかし連続測定研究では、
①食後には一時的にpHが上昇し
②その後時間をかけて再び酸性化する
という傾向が報告されています。
つまり「常に強酸を維持している」という理解は、やや単純化された説明である可能性があります。
3. 胃酸分泌が速いから安全?
巷では、「犬は胃酸の再分泌が速いから大丈夫」という説明もあります。
確かに犬は再酸性化が比較的速いとされています。
ただし、だからといって生肉を食べても絶対安心であるという根拠にするには至りません。
それは、殺菌効果は、到達pH、曝露時間、菌量などに左右されるからです。
食事自体が緩衝作用を持つため、食後すぐに常にpH1の状態が維持されるわけではないのです。
そのため、分泌速度だけで安全性を断定するのは慎重であるべきだと私は考えています。
4. 獣医師会が慎重な姿勢を示す理由
また、米国獣医師会(AVMA)およびカナダ獣医師会(CVMA)は、未加熱の動物性タンパク質を含む食事について慎重な姿勢を示しています。
その背景には、サルモネラなどの病原菌の検出報告、家庭内への二次感染リスク、薬剤耐性菌の問題などがあるようです。
これは獣医師会が生食を全面否定しているというよりも、公衆衛生の観点から慎重であるべきだという立場と理解するのが適切かもしれません。
5. 共進化という視点から考える
犬は長い年月をかけて人と共に進化してきたと考えられています。
デンプン消化に関わる遺伝子の変化が報告されていることも、その一例です。
また哺乳類では出産時や授乳を通して母親から腸内細菌や免疫の影響を受けることが知られています。
現代の家庭犬は何世代にもわたり人の管理下で繁殖され、加熱食やドライフードで育てられてきました。
これが生食への適応性にどの程度影響するかについては、現時点で明確な結論は出ていません。
しかし野生と同じ条件ではない可能性があるという視点は持っておく価値があると私は感じています。
6. 私の実体験から思うこと
私は過去に生食で犬を育てた経験があります。
その子は後に癌を発症し、重度の歯周病にもなりました。
もちろん、生食が直接の原因だと断定することはできません。
ただ口腔環境や菌環境との関係を振り返ると、単純な善悪で語れる問題ではないと感じています。
また、10年にわたる動物診療現場では、あらゆる重病を患った犬をみてきました。
悪性腫瘍、腎不全、肝炎、心臓病、甲状腺機能低下、亢進症、メラノーマ、悪性リンパ腫、胆石、あらゆる病気の犬たち、生食を実践し続けていた、いいドライフードをあげていた、栄養バランスを計算してサプリメントをあげていた、いわゆる大切に大切に育てられてきた犬たちです。
生食が病気を予防する、歯周病を予防するのであれば、あの現実はなんだったのでしょうか?
もちろん、加熱した手作り食を食べていたら病気にならないわけでもありません。
私はそんな短絡的な主張をしたいわけではなく、しっかり選ぶ事や、考えること、まずは情報も我が子も正しく観察することが飼い主ができることなのだと思います。
7. 生食を選ぶなら考えておきたいこと
生食を否定するつもりはありません。
実際に、代々の犬に生肉を食べさせ育てている知人がいますが、仲良くさせていただいております。
ですが、選ぶなら、
犬の年齢や健康状態、家庭環境、衛生管理、体調変化への対応などを十分に考える必要があるということや、もしも万が一の時に自分がどう対処するのか?そのデメリットを受け入れられるのか?ということを
立ち止まって考えるということが大切なのではないでしょうか?
思想や流行ではなく、自分が責任を持てる選択か
あの人がこういったからではなく
その上で、自分はこう考えるという自己決断があるかどうか。
なのではないでしょうか?
8. 私が加熱食をすすめる理由
私自身は、自分の家の犬の食育方針も、Alegriasfoodも、基本加熱食を採用しています。
加熱は病原体リスクを低減しやすく、消化への負担を軽減できる可能性があるからです。
オオカミには加熱という選択肢はなかった。
しかし、我々人間の元にいる犬たちには、加熱食という選択がある。
現代の家庭犬の生活環境や、身体の状態、感染症、耐性菌などのリスクを考えた場合にも、その覚悟を負うことができないからです。
さらには、生食で得られるメリットの多様な菌を摂取することや、多様な栄養価においても、代替可能と考えます。
大切なうちの子、大切なお客様のお子様、そう考えた結果、
Alegriasfoodでは安全性を土台に素材の力を活かした加熱ごはんを提供しています。
もし、今迷っている方は、まずは安心を基準に整えてみるのも一つの方法かもしれません。
投稿者プロフィール
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ごはん歯磨きの先生がいるお店Alegrias代表
ペット食育上級指導士
犬猫手作り健康ごはんAlegriasfood代表の平岡ともこです。
私は、犬猫を家族と想い、彼らの幸せを願っている人と犬猫が豊かに生きること、つまりは【よりよく生きること】をテーマに実店舗の運営をしています。
(犬猫人の心と体がよろこぶご飯Alegriasfood販売、お店でのワンちゃんお預かり・トリミング・ヘルスケアのサービス提供、須崎動物病院大分移動式診療場所提供)
ペットの食育活動として、ペット食育上級指導士として正しいペットの食の知識の提供、飼い主さんのお悩み解決カウンセリング、犬猫の手作り健康ごはんAlegriasfoodの監修などもしています。
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